編集者が編集するのは本だけじゃない! ○○もだ!

ウェブも電子書籍もDVDもCDも編集しちゃうよでもいちばん仕事多いのはけっきょく紙

ホッテントリ後に何を書けばいいのか問題を初心者が考えてもムダだった件

この時代小説がすごい! 文庫書き下ろし版」に寄稿している友人と
さいきん何か面白い本、読んだ? って話をしていたとき
(時代小説縛り)

  私「都筑道夫の『女泣川ものがたり(全) (光文社時代小説文庫)』よかったです」
  友「ああ、もうあの手の作品を書ける人いないかもね」
  私「時代モノの基礎教養の問題って意味で?」
  友「あと、それをひけらかさないストイシズムとか」

そういえば言及するのを忘れてた。
なにしろ3ヵ月前に読んだ本だから。
といま思い出したのが
高城高の「函館水上警察」シリーズ2冊目、
「冬に散る華」という連作集です。

何に驚いたかって

・一定数の読者が存在する、警察ジャンルで
・明治維新直後の函館を舞台にする、ユニークな設定
・サーベルの腕前に秀でた留学経験者、というキャラの立った主人公

続けて書いていけば
作者の看板になる要素をふんだんに持っている、
そんな作品を
あっさりこの2巻目で終わらせてしまっていたこと。
……もったいなくね?

シリーズものといえば最低でも5冊ぐらいは続刊あり、
が昨今の常識だろ。とハナから決めてかかって
収録されている5編の5番目の話を読み進めていた私が
話のなりゆきに
「え? え?」
と、ずいぶんピュアなリアクションをしてしまったのは
もちろん「昨今のシリーズもの」に毒されているから
ではあるのでしょう。

あるのでしょう・けれど
そもそも作家をして人気シリーズを続けさせる最大の要因が
「商業的な要請」だとしても
「読者がそれを望んでいるから」思わず応えてしまう、
というサービス精神の発露も
決して馬鹿にならない要因だと思うので

その意味で、高城高(78)という作家の
ハードボイルド精神を俺は甘く見積もりすぎていた。
完敗だ。
……と、読了後にエラく打ちひしがれた記憶が
強く残っているのでした。

って何の話かというと
たまたま書いたブログエントリが
たまたま注目を集めた場合
ひとはどういう行動に出るのか。
俺サンプルで心の動きを追ってみたけど
結論からいえば
「その数日間の話を書く」のがいちばん自然だと思った
ので書いてみるよ。
って話でござる ←ここまで前置き ←長いわ!

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レイナ・テルゲマイヤー作「9歳のアメリカ人少女がはじめて『はだしのゲン』を読んだとき」

はだしのゲン」が各国語版に訳されていることは知っていても
実際にどういう読まれ方をしているか、は
このグラフィック・アーチストのサイトを見るまで
イメージがわきませんでした。

2009年の、「Beginnings」と題された作品は
彼女が9歳だったころ、
父親のオススメで読んだのがたまたま……
という、わずか3ページの短編です。
作者の了解をいただいたので日本語訳版を掲載します。

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  © Raina Telgemeier, 2009

等身大の、淡々とした、あくまでも私的な
エピソード。といえばそれまでですけど、
微熱を覆うひんやりした夜景のコマとか
個人的には好きですね。

ちなみに、日本語に訳していいかしら?
いま日本ではこんなことになっていて。
というメールを送ったら

中沢先生の作品が子どもには残酷すぎるとされた、という話は残念です。もちろん「残酷」なんですが、私も、残酷な真実を否定することが何かを解決するとは思えません。
これまでに産み出された芸術のなかでも最も重要な作品のひとつ、と私が考えているまさにその作品について、多くのひとにシェアできる機会はうれしいです。

ってお返事をもらいました。

いい人や。

Drama

Drama


Smile

Smile

「うちらの世界」の閉塞感について

たいていの議題において
叩かれる側に憑依するプレイを愛好する私、という嗜好が

「うちら」の世界 - 24時間残念営業

店長のこのエントリが置いて行った
議題における目印・のようなものに
素直に反応した理由かもしれません。

あと
・彼我の差はいつ、どこで生まれているのか
・というかその「差」ってそもそも何ですか
・その「差」の事実を受け入れたとして、今後どうするんですか
という問いは

10歳女児の親というポジションからは
「関係ねーし」では済まない、
という要素もある。

とか思っている矢先

私のいる世界 - ひきこもり女子いろいろえっち

このひきこもり女子さんエントリが
流れてきたので
これはもう完全に、
女子の男親
視点で読んでしまう
わけですな(=おっさん風味語尾

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エンタメ・ノンフという語感に覚える違和感の正体を追求したい(DPZ風に

いまさら。ではあるんですけど

ノンフィクション苦境 経費かかるが売れず - 山田優 - 本のニュース | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

という記事を眺めていたら

 そんな状況を打破しようと、ジャンルや媒体を超えた模索が続く。
 ノンフィクション作家は総合誌や週刊誌以外の発表の場を探している。高野秀行さん(46)の主戦場は、文芸誌。「すばる」や「小説現代」などに連載を持つ。「文芸誌で書くからには、テーマ性だけではなく、文章の面白さで読ませる『エンタメとしても楽しめるノンフィクション』を目指したい」

だけあって
絶対に高野秀行が口にしたであろう、
エンタメ・ノンフ
というタームを意図的に使っていない様子に
勇気をもらったんです。
いいぞ、山田優
小栗旬の嫁かと間違われるから
名前変えたほうがいい、
とか思ってスマンかった←

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発売日変更にともなって(?)何かが露わになっちゃってイヤン(画像あり)

今朝、こんなツイートしたんですけど

どういうことか、と申しますと

こういうことです

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   (画像上:版元公式、下:某新古書店サイト)

固有名詞を出さずにこの件説明できんもんか、
と考えたのですが挫折しましたすみませんすみません。

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くら寿司×手塚プロ「KURA」第1話に和登さんを詐称する女優が出演している件

手塚治虫マンガ・電子図書館サービス
というワードで検索すると
ほぼ間違いなく

凸版印刷、手塚治虫のマンガも読める電子図書館サービス

という、群馬県邑楽郡明和町立図書館での事業が
上位表示されるのですが
(株)アルファシステムズというところが
法人向けに提供している
エリア限定コンテンツ配信サービス
なるものもありまして

デジタルコンテンツを収録した専用機材をコンセントに挿す。それだけで、手軽にその場所にWi-Fi環境を構築し、配信エリアを限定した電子図書館サービスやデジタルサイネージサービスを、当社は提供しています。利用者はWi-Fiに接続可能なブラウザ機能を搭載したデバイス(スマートフォンやタブレット等)があれば、アクセスポイントにアクセスしてブラウザを起動するだけで、コンテンツを楽しめます。

サービスの展開イメージとしては、設置場所だけのエリア限定配信という特性を活かすことで、消費者が来店するきっかけ作り、集客支援、待機時間対策、顧客満足度向上のためのツールとして、ご活用いただけます。店頭、ロビー、待合室、喫茶店をはじめ、乗り物、公共施設、イベント会場等、様々な場所で活用できるため、これからの無線LAN連携事業の市場において、活用・導入が広がります。

     「アルファシステムズ41期報告書」より(リンク先PDF)

この導入事例が
回転すしチェーン、くら寿司
手塚治虫のマンガ全400巻、モーションマンガ50本が
ぜんぶ無料で読めるという「TEZUKA SPOT」です。

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指定管理者の「民間業者ならではのノウハウ」が必ずしも善とは限らない件

はじめに申し上げておきますと
私個人は

・本屋さん好きだし
・図書館も愛用していますし
・古書店、新古書店も遠慮せず利用します
・しかも単行本は買わず、文庫化まで待つので
・自分縛りとして「文芸作品は借りない」って決めてます

というスタンスで、かつ

・自分と違うスタンスのひとがいたっていいじゃないか。

と思う者であります。てことは

・あなたと私のスタンスが違ったっていいじゃない?

ということでもあります。さて。

武雄市図書館、3カ月で1年分の来館者 TSUTAYA運営でリニューアル - ITmedia ニュース

ここの「ランキング」なるものを見て
1位の作品の詳細ページに行くと
蔵書1冊、予約待ち15件
という数字が。おー。
(=複本ないって、それは慶賀すべきことでは。の意)

念のため
同2位、3位の作品を見ても
結論は変わらなかったんで
へー。
意外ー。
としつこく5位まで見ていったら
蔵書11、予約待ち0
という物件に遭遇しまして。

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「新刊は紙と電子書籍同時刊行がデフォルトに」という某紙の細部に釣られた俺の負けだった

「新刊本を原則電子書籍に 角川や学研など 価格は紙の6~8割」
というトピックが日経に載ってる
っていうんで見に行きましたら

出版大手のKADOKAWA学研ホールディングス(HD)が新刊本を原則すべて電子書籍にする。著者の承諾を得て、紙の出版物の6~8割の価格で販売する。これまで市場動向が見通せないとして慎重だった。スマートフォン(スマホ)などで電子書籍を手軽に読める環境が整い、専用端末も普及し始めたため積極策に転じる。(中略)海外市場は北米を中心に拡大期に入っているが、国内出版各社は本格展開に慎重だった。講談社が昨年、業界に先駆けて新刊本の電子化に着手。販売数が5万部を超えるヒット作が出るなど好調に推移している。

と、ありました。

なんの気なく、ふーん、講談社の電子版で
5万部超って? と思ったわけです。
そこそこの数字だから
検索すれば書名すぐに出てくるよね、と。

それがあんなことになるなんて
あのときのぼくは知らなかったんです。

的な。

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What I don't want to let the world know (I mean it)■某自治体発のエピソードがおなかいっぱいすぐる件

How can I describe this situation?

There is a man believing his own almightiness, who happened to be a mayor of a local city.
He tweets (a lot), he wallposts (a lot), and he's not reluctant to hurl abuse at anyone who deserves it.
And oh what a lot of people out there to be despised by the man.

He began conducting e-commerce on behalf of his local goverment at December 2011.
And it happenes to turn out to be a piracy-friendly network.
He privatized a pulic library at April 2013.
And it happend to exchange some convenience for users' personal information with no prior explanation.

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レイ・アレンの3ポイントを見ていて映画「ラストゲーム」を思い出した。というまことしやかな嘘

その日は朝、ついったー見てたら
謎ハッシュタグを発見しまして

親愛なる大統領閣下。ファーストネームが
ムスリムのそれでいらっしゃることは存じ上げてますが、
同時にあなたがジーザスを敬しておられることも
わたしたちは承知しています。
父と息子の再会を祝福してくださいますよう。

んー? としばし考えてオラ、ひらめいた。

そうかー、NBAファイナルかー。
とのんびり思っていたちょうどそのころ
スーパープレイがあったらしく

Ray Allen's AMAZING game-tying 3-pointer in Game ...

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This Is What We Find■クラウドファンディングのデファクトスタンダードがああなってるワケ

クラウドファンディングということばにまつわる浮ついた感も
最近は沈静化しましたね。

というなか
クラウドにファンディングを求めつつ
いわゆる既存のクラウドファンディングに乗っていない、
という意味で興味深い話が目についたのですが。


これを見たときの私は

・まず、6月15日になって
 「今月中によろしくな」と言われたときの顔になりまして
・次いで、微妙に(本当に微妙な・個人の感想です・けど)
 目的の高尚さは手法の稚拙さを覆う、
 というニホヒがしませんか sniff と
 空耳、空目ならぬ空鼻をして
・最後に、Kickstarterが確立したスタンダードは
 よくできてるんだなあ、と思っていました。ら

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インド映画「きっと、うまくいく」世界中で大絶賛、は本当か。

ボリウッド入門作品として絶好、と世評高い
「きっと、うまくいく」
世界が絶賛、という配給会社のPR文を
ホントにぃ? と疑ってIMDb経由で
各国での評判を見に行ってたのはぼくです。

結論を先に申し上げれば
重層的なテーマをエンターテイメントとして仕上げた監督の手腕と
オーバーアクトでありつつ説得力あり、
という不思議な両立を成し遂げた主演俳優のことは
誰もが認めていまして

じゃあ、そういう要素「以外」に
言われていることはないのか、と
拾ってきたのが以下であります。

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「出版デジタル機構がモンスターになる日」が来るとしても

出版デジタル機構がモンスターになる日

話題の前提にはいろいろな要素が絡まっていますが
たとえば
西田宗千佳のRandom Analysis「出版デジタル機構」は日本の電子書籍を救うのか<下> 「水平分業」「ビジネス永続」の理想と現実
三美印刷メールニュースNo.142「コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ) ①― 電子書籍市場活性化と被災地支援 ―」(リンク先PDF)

この件について、個人的な感想はシンプルで。

もし、日本の出版界が
モンスターと化した半官半民な組織のおかげで
崩壊する日が出来したとしても

者ども騒ぐな。

出したい本があって
読みたい人がいるならば
俺たちが必ず
その間をつなぐ。

なぜなら
ほかならぬ自分がその
「読みたい人」の一員だから。

だからいまの「出版界」が崩壊するにしても
嘆くことはない
……って発想が
出版にたずさわる人の
ごくありきたりな考え方ではないだろうか。
と思うんですけど、どうなんですかね。

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(ネタバレ無し)宮部みゆき「ステップファザー・ステップ」原作続編レビュー(愛読者バージョン)

某「おい、こいつ息をしてないぞ」なSNS
宮部せんせコミュを久しぶりに覗いたら
ちらっと話題にあがっていたので
  初期の名作「ステップファザー・ステップ」に
  続編が存在して
  かつ、せんせ自身が本にまとめることはしないと言っている
  ということまでは知っていたものの
  内容までは一切知らなかったので
  愛読者歴15年(=そこまで古くない
  としては
思い立ったが吉日、と
国会図書館に掲載誌の遠隔複写申請をして
読んでみました。

なお、本題からは外れますが
国会図書館まで遠征する交通費を考えると
・複写実費(今回1,272円)
以外に必要な
・発送事務手数料(固定:150円)
・送料実費(今回367円)
をあわせても
この遠隔複写サービスってお得。
ということに
初めて利用してみて、気付きました。

なにしろ資料検索から請求、
そこからの複写請求、完了までの
待ち時間を考えると
  せっかく来たんだから、と
  いろいろよそでは閲覧できない資料まで
  目を通しておこう、という気分も働くし
一日仕事になるわけで
いいですね、真面目な話。

さて、そこで
作者が単行本化することはない、と言明している
ステップファザー・ステップ」続編
5つの短編です。

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本屋大賞ヲチヤーとしては最新2013年についても何か言うべきだろ(震え声)

自分の中で、言うべき「何か」が
熟成されるのを待っていたけど
特記事項ナシという感じでした、
というエントリでございますんで
そこのところを斟酌いただきまして
どうかひとつ。

なにしろ、です。

「炎さんがお怒りです」という光景も
(実は)風物詩になりつつありますし

受賞した流行作家氏のかつての発言を蒸し返すのも
せつこ
それ、本屋大賞についてやない、
受賞作家についてやがな。

というようなことを
考えていくと、淡々と
「やー今年も盛況でよろしゅうござんした」
ぐらいしか
言うことが残らなかったんですよ。

なるほど、だから人は
つい炎上を見越した記事を書いちゃうのか、
と某新聞の心理を追認したり。

で、以下は文字通りの蛇足。

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