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編集者が編集するのは本だけじゃない! ○○もだ!

ウェブも電子書籍もDVDもCDも編集しちゃうよでもいちばん仕事多いのはけっきょく紙

Googleブック検索の是非をいまさら問われても

グーグル「ブック検索」拒否が"書籍を殺す"とわからない人々
http://www.cyzo.com/2009/07/post_2386.html

CNETやら新書やらを通じて
佐々木氏をプロのITライターと認識していたので
おお。いまさら炎上覚悟?
な蛮勇(と呼んでいいと思うの)にまずもって感心。

立ち位置の違いが即コミュニケーションの断絶
となるような、ひらたくいうと
「アナタとワタシは金輪際わかりあえない」この話題に
あえて−この紙幅で−手を伸ばすって。
メリット/デメリットを考えたうえで書くのがプロ、だとすると
これ、どうなんですかね佐々木さん。
火中の栗にしては熱すぎたんじゃないでしょーか。

ブック検索によって、どういう利益不利益が生まれるのかをきちんと捉えておくべきだ。書籍の読者から見れば、不利益などひとつもない

まず、コラム全体について思うことなのですが
上記のような「読者視点のみで語る」手法そのものが
結果としての片手落ち感
を醸し出すことになっているような気がします。

むろん、原稿には文字数という制約があるにせよ
「読書マーケットの健全な発展」
というトピックを語るに際し
受け手都合だけ、あるいは作り手都合だけ、で話を進めると
そもそも断絶している両者の溝がどこにあるのかを
直視することすらできない。
……という直感が働いて、だかなんだかはわかりませんが
mixiニュースのコメントや
はてなブックマークを見る限り

書籍の作り手/受け手分類においては
「受け手=読者」が大多数と思われるこのコラムの読者の反応が
「読者としてはよろこばしい」という論調に傾かず、むしろ
「なんて一方的な」という感想多数、という結果に。

そこで佐々木氏に代わりましてこの件、
読者ではなく「作り手」として考えると
「不利益」はあるのか、あるとすればどこに?

グーグルはこのプロジェクトで、すべての利益を収奪するわけではない。63%は著者に分配されるレベニューシェアモデルで、検索によって書籍に対する読者のアクセスが増加していく可能性を考えれば、これは両者にとってはWIN―WINの関係以外にはならない

作品は著者ひとりの力によって生まれるものではなく、
編集者という他者が介在してはじめて成立する、という件。
つまり「編集権」に対するキックバックが想定されていないのが
第一の問題、でしょうか。
(ちなみにGoogleが対象とする書籍が「絶版」に限定されると
既に出版社はくだんの「編集権」を放棄したとみなせますが
ここでは「現役で」「生きている」書籍が
Googleブック検索の対象になるとします)

日本の出版社の大半は、みずからのインターネットリテラシーの低さを棚に上げて「全文検索できると、本を買う人がいなくなる」などと、なんら根拠のない主張をしてきた

第二の問題はここ。
つまり、コンテンツをデジタル化すれば
紙というアナログな形態の売り上げが減って
商売あがったり。な状態が
決して“ありえないとはいえない”こと。

たとえば今、バカ売れ中の「1Q84」が
ウェブで全文検索できるようになるとする。
図書館で予約待ちしているひとたちは
ハードコピーを不要とみなして
「紙の本」を手にとらなくなる、のでしょうか。

A.全員デジタルに移行してしまう
B.何人かは本という形態への懐旧の念に駆られてアナログ堅持

佐々木氏の論にしたがうと

C.むしろアナログ増

ということかと読めるのですが
個人的には、少なくとも「いますぐ」A.にはならない、
それは紙の本という発明が
それだけ人の手になじんできた優れたフォーマットだから。

しかし、程度問題こそあれ
「検索すれば本文読めるのなら図書館で順番待ちなんかしないで」
デジタル端末で読んですましてしまう
ユーザーも確実に何%かは存在すると思われます。
つまり、B.なんじゃないのか。

そして、この足音が徐々に大きくなっている事態こそが
現今の読書マーケットにとっての危機であり
B.はひとりGoogleによってもたらされるのではなく
デジタルコンテンツという
「紙の本」以外の情報入手フォーマットが発明されたときから
内包されていた。

・敵を見誤っていることこそが問題
・退潮するアナログに代わる武器を自ら調達すべき

付け加えるなら、Kindleの上陸を待つまでもなく
日本には携帯電話っつーきわめてすぐれた読書端末が実在し
「アダルトコミック市場」がまず拡大した現実があります。
敷衍して考えるに、「コミック」をトリガーとすることで
コンテンツは拡販しうる、という思いはあり

・デジタル化の波に当たる際、アナログの経験知は使える

そんなわけで私見は
・“書籍を殺す”のはGoogleではない
・佐々木氏のコラムも、それへの反発も私には
“なんだか違う”気がするー