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編集者が編集するのは本だけじゃない! ○○もだ!

ウェブも電子書籍もDVDもCDも編集しちゃうよでもいちばん仕事多いのはけっきょく紙

リテイクへの渇仰「サブウェイ123 激突」

映画


かつて自分が編集した雑誌で
脈絡なく四半世紀前の作品に3ページも割いたほどの
オリジナル版(邦題「サブウェイ・パニック」)への偏愛。

そして、特集号を作るだけで満足せず
当時の社内水準ではとってもお高い金額を
フォトエージェンシーに払ってまで
イケてる表紙写真を入手したほどの、
主役デンゼル・ワシントンへの愛。

偏愛する作品のリメイクを
偏愛する俳優が主演する、という
夢のような組み合わせが、この
サブウェイ123激突」(9月4日公開)でした。

縁あって一足先に見ることができたのですが
見るまでのドキドキは、
どーしよーダメな作品だったら。
と、いたって弱気なもので
全米での興行成績が
ほぼ失敗に近い形に終わったという情報も
明るくない予見を引き出してくれていたわけです。

が。
いざ見たら、リメイクといいつつ
まったく別の作品になっていて
しかも、久々に
デンゼル・ワシントンの演技を堪能できて
……満足。

スティーブン・ビコや
ハリケーン・カーターや
マルコムXなど
歴史上の人物を演じて見る者をうならせる以外にも
HIVへの偏見をふつうの人並みに持っている弁護士
(フィラデルフィア)
軍規に対して人並みに忠実であろうとする軍人
(クリムゾン・タイド)
息子の病気を治したいという人並みの親でありたいがあまり、病院占拠
(ジョンQ)
など、「人並み」の登場人物を
「人並みでなく」(=結果としてカッコヨク)
演じて来たデンゼルですが
今回は
ふつうのおっさんを
あくまでもふつうレベルに留めて演じて
それが感動を誘う、という初の試み。

対するトラボルタも
ハイジャック犯というある種、お約束内のキレた役どころなのですが
犯罪者らしい軽騒さと
前歴が生んだ、ねじれたプライドのありかたとを
ほどよく表現しきれていたあたりはさすがで、
ちょっと見直しました。

ところで何に感動したかって、彼らふたりが演じる
・ふつうの地下鉄職員
・キレ気味なハイジャック犯
という、元来かけ離れたキャラクターたちが
無線越しに対峙しつづけるうち
1点、共通して抱いている思い
−「この人生にtake2があればどんなにいいだろう」という焦燥感−
が見えてくるところ。

「おまえオトコだなあ、おい」
とトラボルタがしみじデンゼルに言うシーンなどは
実に説得力に富んでおり
あやうく泣きそうになったり。

ハイジャック犯が地下鉄職員を
BuddyとかMy manとか
なれなれしく呼ぶことに他意はなかったのが
そのシーンを境に、彼らふたりの間に
想定以上に確固たるコミュニケーションが確立され
それもいわゆるストックホルム症候群のような
犯罪者に被害者が同調する、
一方通行な感情の流れではなく
ふつうのおっさんふたりの
「人生やりなおせりゃどんなにいいだかなあ」
という思いが等分に流れ着く中間地点へ
観客のおっさんたる私も連れて行かれる、という
稀有な体験。

本来それらはラストへの伏線なわけですが
作品全体がアクションを優先するあまり
後半、それらを回収しきれないキライがあるのは否めません。
しかしね、そんなものは
北上次郎ふうにいえば)瑕瑾でしかない、気にならない。

オリジナル版はスリルとサスペンスに満ちた、
機知に富んだセリフが魅力的なアクション映画でしたが
このリメイク版は
人生半ばを過ぎた、ふつうの男たちの悲哀が
アクションの間から随所にこぼれ落ちてくる
ヒューマン・ドラマ、だったのでした。

……そうねえ、そのマーケティングしづらい感じが
興行不振につながったんでしょうかねえ。
いや、しかし満足。