編集者が編集するのは本だけじゃない! ○○もだ!

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「○○な人対応マニュアル」6箇条


日本の漫画家で最も早くkindle対応に乗り出したひとり、
として注目を集めている
うめ……さん(いや、呼び捨てにしづらくない、この筆名?)
の先日ツイートにソソラレまして

○○とのつきあい方難しい。
「電話番号教えてください」「9〜17時なら電話でれます」→音信不通。
「3日以内に収録したい」「来週ならなんとか」→音信不通。
「添付文書読んでください」「docじゃなくてtxtで」→音信不通。
http://twitter.com/ume_nanminchamp/status/11795305079

あ、よかった(?) やっぱりウチだけじゃないんですね。
教えて、○○の中の人。RT (引用者によりアカウント略)
同じようなことが僕にもあったのですが、
○○対応ノウハウみたいなのって、どこかにまとまっていないのでしょうか
http://twitter.com/ume_nanminchamp/status/11795792195

試しに書いてみよう。
あ、一部を○○化したのは
そっち方面への配慮というより
問題が業界特有なものなのか、それともごく普遍的なものか、という判断を
後からしてみようと思ったからです。

1.「おれ○○の人だけど詐欺」ではない確認をしましょう
先方は何と名乗って電話/メールしてきましたか?
自分に置き換えてみてもわかるとおり
人は「自分はこう名乗ると他人に伝わりやすい」と
経験値的に認識した方法で名乗りをあげるものです。
ただ、それがあなたにとってわかりやすいかどうかは別の問題です。
先方は名乗りをあげた瞬間、用件に移ろうとするでしょうが、
もう一拍、間をおくべきなのです。

[例文]
あ、ええと、局の方ですか? 制作会社の方? 社名うかがっていいですか。
失礼ですが、ディレクターさん?

2.責任の所在を確認する
アポ取り電話をかけてくるのは十中八九
「エラくない人」です。
肩書きと責任感が−仮に−比例するものならば
トラブルになったとき誰に尻を持っていけばいいのかは
自衛のためにも知っておきたいところですね。

[例文]
相手がADと名乗ったら
「今回のこの取材の件のディレクターさんは……どなたでしたっけ」
ぐらいの聞き方を推奨

3.懸念はハッキリ表明する
これまで“また後日ご連絡します”って言われて
その後なんの連絡もないことが多くて。
など、おまえもまたそのパターンか?
という懸念は早い段階で明らかにしておきましょう。
なにもあなたが遠慮する必要はないのです。
なにしろ相手は社会経験が少ない若者
でなければ
若くもないが社会常識が少ない人物
なのです。
「どうすべきか知っていてなお、失礼な振る舞いをしている」ことよりも
「どうすべきか知らないので、結果的に失礼になっている」ことのほうが
圧倒的に多い。たいへんお手数ではありますが
「それ、世間じゃ通用しないよ」と説明してあげてください。
その結果あなたが
番組会議の席上「けっこう面倒なひとでした」呼ばわりされたからって
どうってことないじゃないですか。
第一、何を言われたって聞こえませんしね。

[例文]
出演するのは別にいいんですけど
「来週のどこか1日」ってそんな大雑把な依頼で
OK出来るわけないんですよ
あなたたちは
「テレビに出れるなら誰でも大喜びで不便はしのぶ」って
思ってるのかもしれませんけど
そんな時代じゃないですからね。
それ、わかってます? 本当にわかって言ってる?

4.ITリテラシー不要村に行ったと思うべし
彼らが生きているのは
メール添付が成功したら勇者、という世界です。
wwwって何だ、プロレス団体か。という社会です。
たしかにiPadkindleという商品名は知っているかもしれません、
でも彼らの携帯はあくまでも通話用ですし
OSは何年もパッチファイルあてていない危険な状態だし
……そういう人と話しているのだ、という自覚を持ちましょう。

[例文]
ああ企画書データ、いただいたけど
.docでなくて.txtにしてもらっていいですか。
あ、じゃあFAXでいいです。FAX送ってください。
ただ今日中に送ってもらえないと
こっちの予定も立たないので
この話なかったことにさせてもらいますけどいいですね?

5.後日クレームを伝えるには
これは黙っておけない。
ということが不幸にして起きた場合、どうすればいいでしょう。
ブログに書く、ツイッターでつぶやく。
もちろんそれはそれとして、○○各社のウェブサイトにある
ご意見フォームを活用しましょう。
ここから送信された情報が
エラい人を含め内部で共有される確率は(意外に)高いのです。
なお、間違っても
電話を通じて何かを伝えようなどと思ってはいけません。
苦情受付の電話対応こそが最大の苦情発生源、
というのは常識です。

6.罪を憎んで人を憎まず。的な
本業以外での収入源を心底欲しているにもかかわらず
権利者の許諾が……という変り映えのしない理由で
過去コンテンツの活用がなかなか進まない、
それが○○業界です。
ただ、このシチュエーションを生んでいる最大の理由は
「われわれ○○とは、行く河の流れの如く、
常に動いているものなのである」という
彼らの信念にあるのではないか、と私は思うことがあります。
拙速でもいい、鮮度さえよければ食える。
そういう空気を吸って
「また連絡すると言ったものの眼前の新しいことに追われて忘却なう」
な若者が育つとしても、責められるべきは
当の彼/彼女ではないことは自明です。
ああ、それでこそ。
という認識で彼/彼女に接する姿勢が
あなたの精神衛生の向上に寄与するでしょう。

おわりに
5.で触れた各社ウェブサイトを見ると気づくのですが
あなた/わたし
を指す語彙は
「視聴者」であって
「お客様」ではありません。(※)
彼我の認識の違いにおおける、最大のものは
ここではないかと私は思います。
そう、私たちが常々誤解しがちなこと、それは
私たちは○○の人たちにとって
「視聴者というクラスタ」ではあっても
決して「客」ではないのです。
○○の人にとっての「客」は
お金を払ってくれるスポンサーだけ。ここ重要。ホントに。

今回は○○という業界は特殊なのか?
というギワクが出発点だったわけですが
こうしてみると−そうは書けていない、という気が猛烈にしつつ−
個人的には「ダメな社会人にありがち」
という括り方に収まる程度ではないか、と思ったりしました。

※例外は国営放送