本屋大賞連ドラ化決定(全12話)!■の文字で妄想する物語(第9話~第12話)
連ドラ本屋大賞■第9話「そしてみんなタイヘンだった」
2002年11月26日(火)
かつてなら○○さんの本がベストセラーになったら、その作家が今まで書いた作品も一緒に売れていた。そういう興味の持ち方をしている読者が多かった。しかし今はその作家への興味が続かない。次に買う本は、また話題になっている別の作家の本である。...こういう時代が続けば、作家という職業は成り立たなくなるのではないか。
2007年11月20日(火)
2007年の出版界を象徴する話で、本はそこそこ売れているけど、文庫、新書、ケータイ小説とほぼ1000円以下の本ばかり。書店さんは冊数は前年比を越えているのに、金額が前年比を越えないという状況...実は出版業界も紙代が上がっていて、ハッキリ言って値上げしないとやっていられない状態なのである。営業である僕は、ことあるごとに発行人の浜本に「そろそろ雑誌の値段あげてもいいんじゃないですか?」と申告しているが、やはり雑誌の値段を上げるというのは相当抵抗があるようで、なかなか決断できずにいる。
そんなことを印刷会社の営業マンと話していたら、「いやー紙代もそうなんですけど、ガソリンの値上げで輸送コストがめちゃくちゃ上がっているんですよ。そろそろ出版社さんにお願いしないといけないかもしれません」なんて耳を塞ぎたくなる話をされる。参った。
2007年11月22日(木)
藤沢、戸塚、横浜、川崎、最後は神保町に駆け込むという、かなりハードな営業を終えると外は真っ暗。ハードなのは僕だけでなく書店さんも超大量の新刊大洪水にフラフラの様子。ほんとかウソか知らないけれど、本屋大賞狙いで、ギリギリの11月に話題書を出すという流れになっているとか。でも投票する書店員さんは「こんな新刊が多いんじゃ、平台に置いておけるの2日くらい?」なんて。いやはや。
2008年1月17日(木)
売上はきちんとあったようなのだが、ビルのオーナーが交代し、家賃の大幅な値上げを通告され、残念ながら閉店することになってしまったとのこと。そういえばいつだかとある書店の経営者の人と話していたら「これから怖いのは家賃と借り入れ金の金利上昇だ」と言われたことがあったが、まさにその怖いことが今起きているのだろう。
2007年11月20日(火)
朝、本棚から今日読む本を抜き出そうとしたら、娘に「パピプペポ! そこを触って本を出しちゃダメなの!」と大声で叱られてしまった。パピプペポとは、最近の僕の呼び名であるが、なぜそう呼ばれるようになったかは不明である。
「えっ? 何で?」
「その上の部分(背の上部)を触って本を取り出すと本が壊れちゃうってこの間図書館の先生に教わったの。だから本と本の間に指一本分くらい隙間が空いているから、ちゃんと指を入れて抜くようにしなきゃダメなの!」
連ドラ本屋大賞■第10話「本屋さんの3.11」
2011年3月14日(月)
こんな時こそ、目を覆いたくなる現実を、ほんの一瞬でも忘れられるような本を作っていきたいと、発行人兼編集長の浜本ともども話しております。私たちにはそれしかできません。頑張って参ります。ご心配ありがとうございました。
なによりも、ひとりでも多くの方の命が救われるよう祈ってます。
2011年3月18日(金)
計画停電の影響で休業している書店員さんが「早く本が売りたい」と話していたが、私も心置きなく本屋さんを廻りたい。営業し売上を上げたいというのではなく、そのなんでもない日常を自分がどれだけ愛していたか気づいたのである。
2011年3月25日(金)
棚から本が落ちたり、棚が倒れたり、あるいはスプリンクラーが誤作動してしまったり、はたまた何にも被害がなかったりと、関東の書店さんでは、震災の被害もバラバラのようで、訪問してみないとまったくわからない。また売上も、節電による営業時間の短縮の影響や、震災時に帰宅難民になった人たちがなるべく早く地元に帰ろうとしているからか、都心部でダウン、郊外でアップ(前年並み)の傾向があるようだ。本日訪問したとある書店さんでは、19時以降の来客が急に増え、前年100%を超えるかもと話されていた。
2011年3月31日(木)
震災から20日。都内の書店さんはだいぶ日常を取り戻しつつあり、またお客さんも場所によって差はあるものの、随分とその姿を見かけるようになった。しかしまだ営業時間の短縮や、「一本一本確かめてどこの照明が最低限必要かチェックしたんですよ」と荻窪Y書店Mさんが話されるように節電は続いている。そして被災地の本屋さんに本や雑誌が届けられるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。
伊坂幸太郎ファンサイト、
「無重力ピエロ」に
2011年4月12日の
本屋大賞授賞式で
被災地書店員さんに向けた
伊坂幸太郎メッセージ
へのリンクがあります。
連ドラ本屋大賞■第11話「全俺が泣いた日」
2011年1月25日(火)
なんだかんだ言いつつ8回目となり、もはや私がなぜこんなに本屋大賞、本屋大賞と書いているのかもわからない人がほとんどだが、それはそれでいいのだ。
そんななか古い手帳が出てきたので、ペラペラと見ていたら2003年のちょうど今頃、後に本屋大賞を作ることになるキッカケとなる飲み会のいくつかが開かれていたのだ。
あのときみんなで酒を飲んで心底心配していたのは、本の未来だった。売れない、売れない、本がどんどん売れなくなっていく。
底なし沼のような絶望の淵で、このままじゃいけないよと危機感を抱いた書店員さんたちがいたのだ。そして自分たちの手で何かしようと始めたのが本屋大賞だった。
当時、投票してくれた書店員さんたちも同じ気持ちだったと思う。
その気持ちを私は絶対忘れない。
2011年4月12日(火)
「パパさ、本の仕事しているんでしょう? じゃあさ、今日発表される本屋大賞って知ってる?」
「えっ?」
「パパの会社、小さいから知らないんでしょう。テレビでやっていたけど、本屋さんがね、みんなで投票して決めるんだって。何に決まるかなあ。私が知っている本か、パパが持っている本ならいいなあ」
本屋大賞を作ろうと遅くまで会議していた頃、私が帰宅すると赤ちゃんをあやす妻から何度ももっと早く帰ってきて欲しいと嘆かれたものだった。
連ドラ本屋大賞■第12話「そして、ひろがる」
2010年4月21日(水)
昨夜は疲労困憊で本屋大賞の打ち上げも途中で切り上げたが、今朝になってもどっぷり疲れは残っていた。膝から下に力が入らない。いつまで経っても布団を出る踏ん切りがつかず、だらだらと横になっていた。
「ドン!」
その背中を突然蹴飛ばされる。この春、小学4年生になった娘である。娘は女子サッカーをやっているから、その蹴りが半端ではない強さである。痛みに悶絶していると
「父ちゃん、いつまで寝てるんだよ」
と今度は馬乗りになってくる。マウントポジションだ。ふと気づいたのだが、いつの間にか私の呼び名は「パパ」から「父ちゃん」になっている。
2010年9月29日(水)
マンガ大賞の首謀者のひとりでニッポン放送のアナウンサー・吉田尚記さん...マンガ大賞を創設されるとき「本屋大賞をぱくらせてください!」とわざわざお伺いいただいた。
2009年2月27日(木)
とある書店員さんに教えられ、2冊の本の帯を見てビックリしたのだ。なぜなら片方には「2008年フランス本屋大賞受賞作」とあり、片方には「フランスの「本屋大賞」受賞」とあったからだ。...あわててそれらの本を開いて確かめてみると...著者略歴に「Prix des libraires」受賞とある...が、たとえフランスの書店員の投票で決める賞であったとしても、それはどこまでいっても「Prix des libraires」であって、本屋大賞は、我々が何回も何回も議論して決めた、あのルールに乗っ取ってやっているものをさすのである。だから超訳されては困るんだけど、もしかして私が「春日部のマラドーナ」と呼ばれているのと一緒だろうか。
2009年9月16日(水)
夜、第5回酒飲み書店員大賞の授賞式に参列。といってもその名のとおりの団体なので、船橋の居酒屋でビール片手に乾杯なのであった。...あの頃は、まだこういう本屋大賞ミニ版のような、書店さんで勝手に売り出すものを決めてやるようなコンペもほとんどなく、酒飲み書店員大賞は大変珍しい存在だった...今は、百花繚乱、いろんなところでこのようなコンペがされていて面白い。地域性があるのは、京都の水無月大賞、名古屋のBOOKMARK NAGOYA「名古屋文庫大賞」などで、書店チェーンでいうと町の本屋さんが集まったネット21でも同様のものが開催されている。そして一番いろんなことに挑戦しているのが啓文堂チェーンで、こちらはいわゆる文庫大賞だけでなく、雑学文庫やビジネス書でコンペをしたりしていて目が離せない。...全国でこのようなことが行われ、本屋大賞が甲子園の決勝戦みたいになったら面白い。
2007年11月1日(木)
『床下仙人』原宏一(祥伝社文庫)の...ブレイクのきっかけになるPOPを作られたのが町田のY書店のSさんなのだが、そのSさんが書かれている『天下り酒場』(祥伝社文庫)の文庫を読んだら、なんとSさんが『床下仙人』を知るきっかけになったのが『本屋大賞2007』に収録されている発掘部門の投票だというではないか。本屋大賞の投票から大賞作品以外のヒットを産む、というそういう関係こそが、実行委員が目指していたひとつのかたちなのだが、こうやって利用されていくのは本当にうれしい。
やー
やっぱり炎の営業こと杉江さんの
日記で
何がいちばんしみじみするかって
子どもたちの成長が
手に取るようにわかるところですねえ。
……うちにも似た年齢のが
いるような気がするけど。
それとこれとは
ちょっと違うんだよ!