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編集者が編集するのは本だけじゃない! ○○もだ!

ウェブも電子書籍もDVDもCDも編集しちゃうよでもいちばん仕事多いのはけっきょく紙

35.一夜の出来事


初出:1952年オール讀物8月号
参照:初出誌
時代設定:1867年12月
 「この慶應三年十二月の江戸では」

全面抗争を決意した薩摩藩
直接・間接不問で
江戸の治安を乱す行為を繰り返し
遂に堪忍袋の緒を切らした庄内藩薩摩藩邸を焼き討ち。
という展開は時代小説ファンにはおなじみですが

いまでいう警察庁長官にあたる
庄内藩主の愛妾が誘拐拉致される、という事件も
(事が史実に即しているかどうかは別として)
そこそこ有名なエピソードではないかと。

ちょうどその誘拐拉致事件そのものを描いた短編が
本作なのですが
これねえ、困るんですよねえ。

鞍馬天狗のデビュー作「1.鬼面の老女」から
10.小鳥を飼う武士」1作飛ばして「12.鞍馬天狗余燼」までの11編は
作家として習作期にあった大仏次郎
歴史年表を横に置きながら順番に書き進めていった、かのような
時系列に沿った連作になっていまして
当然、この事件も描かれています。

 「お主を男と見込んで頼む。この女を、どこへでもよい、江戸から外へ運び出して捨ててくれ、とこうおっしゃる。捨ててくれには驚いた。もったいねぇじゃ追いつかねえこった。きょとんとしていると、益満の旦那が、うむ、この女はお主にやろうから、煮るなり焼くなり勝手にしろ。ただ江戸から他へ運び出してくれ。但しこれは酒井の妾だ。途中でわかると首がないぞ……。」
    「9.御用盗異聞

 襲撃は、道三堀に沿った路上で行われた。襲う方は計画的なものだったので、手順よく、あっと思う間の出来事で、簡単に運んだ。駕籠の行く手に人が出て来たと思うと、武士で、避ける様子がないのが酒にでも酔っているのかと見えたので駕籠の方で向きを変えた時、素ばやい動作で提灯を奪い取って道路に投げ捨てた。
    「35.一夜の出来事」


ぬおお。
38.紅葉山荘」と「41.夜の客」が
同じモチーフを使い回して書かれている、それはまだしも。
9.御用盗異聞」で書いたことを
無視する要領で「35.一夜の出来事」が書き直されている
これは鞍馬天狗全エピソードの時代を推定しよう、という企画において
とっても迷惑。

ええ、そこで私が提唱しているのが
鞍馬天狗パラレルワールドに複数いる説。
なんですの。