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18.宗十郎頭巾


初出:1935年講談倶楽部
参照:ちくま日本文学全集(38)(1992年8月、解説鎌田慧)
時代設定:1864年6月
 「どちらさまでございますね? あんた方」「屋敷か?」「へえ」「河原町の長州だ」
 (1864年8月、蛤御門の戦で消失する前)
 「季節はもう梅雨にはいって」
 「鬢をなぶる夏の朝風の中に、彫像のごとく静かな姿勢で、じっと見みまもっていただけでした」


1933年の日本共産党スパイ査問事件、
あるいは
帝政ロシア時代の二重スパイとして名高い
エヴゲエニイ・フィリッポヴィッチ・アゼフ。
彼を描こうとした
ものの
当時の検閲情勢を鑑みるに
ノンフィクション小説スタイルでは到底発表できないと悟った作家が
鞍馬天狗シリーズにモチーフを移植して……
と、成立事情を云々されることが多い短編です。

ちくま日本文学全集(1992)だけでなく
小学館文庫(2000)にも収載されたことで
比較的、流通量が多いことを
まずは作品の寿命のためにも喜びたいですね。

作者が“本当はしゃべりたかったこと”を
多少強引でも鞍馬天狗に代弁させる、という手法を
意図的に採るようになって間もない作品だけに
語り口に生硬な部分があるのは否めませんが
テーマが古くなっているとも思えません。

 「率直に言いたまえ。ほかの同志の者が、ほとんど襤褸を着て赤貧洗うような苦しい生活をしながら国事に奔走しているのに対して、君のしていることは、われわれから見て解し難い。ことに、それだけの金がどこから出ているのか?」
 問いの真意をさとると、思わず、鞍馬天狗は蒼ざめていました。
 (なんだと! この人々は、俺が敵に買収されて金でも貰っているとでも思っているのか? この俺がだ!)


突然思いもよらないことを言われたことがありますか?
聞く耳を持たない相手にあわわわ、って状態になったことは?
まったくの誤解をもとに、知らないひとからdisられたりは?

そんな経験は一度もない、とおっしゃるあなた。
あなたは自分がいかに幸福な人生を歩んでこられたか、を
十分には理解してなくってよ?

 「言葉に角が立つとすれば、それは俺のせいだけではない。俺は、おだやかに話したいと願っている。正当に、平穏に、話したいと思って躍起になっている。自分のこととは思わず、他人のことと思って、腹を立てずに、だな。これには一方でない我慢が要るぞ」


ツイッターで炎上してる友人からメール来た。
って内容かと思いませんか。
ぜんぜん古くなってないな。