たった3行でエエ話がナンヤソレに変わる、魔法のようなブックレビュー
読了後すぐ
「ベスト10の中に一冊でも気になる本があったら、正月休みにぜひお読みいただきたい。小説はまだまだ力を持っている」 webdoku.jp/column/meguro_… という北上次郎のことばを信じて読んだ1冊がなるほど納得のフィクションで満足したんで、ぼくのお正月休みはいま終りましたん。
— unpocketableさん (@unpocketable) 1月 7, 2013
とツイートしたぐらいに読み応えがあった作品について
3. こんなことを申し上げるべきなのか
2. いや、ダメだ。という葛藤ありつつ
1. 結局書いちゃうんですけど
値札の横には「ホーランドロップ」と記載されている。きっと人間が品種改良をしたウサギなのだろう。耳をピンと高く張って周囲を警戒する必要のないペット用のウサギだ。
僕はまたクスリと笑う。このウサギが自らの意志で「何も聞きたくない」と耳を塞いでいるように見えたからだ。
他のウサギは「いっぱい聞きたい」と躍起に耳を進化させたのに対して、こいつときたら我関せずで鼻をピクピクさせて自分の世界に閉じこもっていやがる。
この「躍起に」って用法に
違和感を覚えるのは私だけですか。
「躍起になって」あるいは「しゃにむに」
じゃないのかなあ?← ×疑問符 ○婉曲表現
形容動詞「躍起だ」の連体形なら「躍起な」だし
名詞「躍起」と格助詞「に」の組み合わせなら
せめて「耳を躍起に進化させた」と
助詞の指すことばが“耳”ではなく
“進化”にかかるようにしなければ
……って、ええい、うるさいね俺!
でもねえ しつこいけどね
これ、物語が始まった直後、
2ページ目にあるシーンなんですよ。
気になるじゃないですか。
日本語をどう扱うか、という
極めて趣味的な部分を
どうでもいいわー。
と思っているたぐいの作家なら
失礼しました! って
文字通り敬して遠ざければ済むけど
読んでいけば、すぐにわかることなのですが
たとえば登場人物たちのキャラクターも
既存の類型に拠ることなく
エピソードや会話文を
ていねいに重ねることで
オリジナリティを浮き彫りにしていく、というタイプの
作家だったんですよ?
それに
-安易なフレーズを使いますけど-
北上次郎が2012年ベスト1に推した
作品なんですよ?
たしかに瑕瑾だけど、
それだけに
もったいないと思うんですよね。
ええ、北上次郎なら
「キミはゼイタクだよ」
と一蹴するところですけど。
……たぶん50ページぐらいずーっと
この言い回しが気になってたからなあ。
もうちょっと、こう
作品の細部に
躍起になれなかったものか、と。
でまあ、2013年早々
この作品に出会ったのは収穫でした、
と思ったわけで。
っていまさらホメても遅いですか、そうですか。
- 作者: 白河三兎
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