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山口瞳の根本思想の芯の芯なるものに共感せざるをえない

数日前
とある流行作家が
とあるツイートをしていたのですが
それが

・自分の意見はこうだ
・それに与しないひとがいる模様
・その発想がしかし、
 どこから来たものだかテンでわからん

という組み立てで
ふーん。
と思ったんですね。

自分と合わない意見の主を
disるような論調でない部分は
えらいゾ。とほめたい感じながら
(それが出来ない人の多さを考えればねー)

その「どこから来たんだ」意見に
限りなく近い意見を持つ私としては
むしろ
その作家先生の発言にこそ
違和感を覚えた、ということをね
とりあえず記録しておきたい。


……という前置きをして
晩年の山口瞳の文章を引用。
(文庫「木槿の花」収載「私の根本思想」)

 いわゆるタカ派の金科玉条とするものは、相手が殴りかかってきたときに、お前は、じっと無抵抗でいるのか、というあたりにある。然り。オー・イエス。私一個は、無抵抗で殴られているだろう。あるいは、逃げられるかぎりは逃げるだろう。(略)かりに、○○軍の兵士たちが、妻子を殺すために戸口まで来たとしよう。そうしたら、私は戦うだろう。書斎の隅に棒術の棒が置いてある。むこうは銃を持っているから、私は一発で殺されるだろう。それでいいじゃないか。

 それでいいと言う人は一人もいない。(略)人は、私のような無抵抗主義は理想論だと言うだろう。その通り。私は女々しくて卑怯未練の理想主義者である。

 私は、日本という国は亡びてしまってもいいと思っている。皆殺しにされてもいいと思っている。かつて、歴史上に、人を傷つけたり殺したりすることが厭で、そのために亡びてしまった国家があったといったことで充分ではないか。

 そんなふうに考える人は一人もいないだろう。私は五十八歳になった。これが一戦中派の思いである。戦中派といったって様々な人がいるわけで、私は同じ考えの人に会ったことがない。

 二兆九千四百三十七億円という防衛費を「飢えるアフリカ」に進呈する。専守防衛という名の軍隊を解散する。日本はマルハダカになる。こうなったとき、どの国が、どうやって攻めてくるか。その結果がどうなるか。

 どの国が攻めてくるのか私は知らないが、もし、こういう国を攻め滅ぼそうとする国が存在するならば、そういう世界は生きるに価しないと考える。私の根本思想の芯の芯なるものはそういうことだ。

山口瞳の依怙地な芸風と
「マッチョになれない」性分は
ときに近親憎悪を覚えるほど
私には親しいもので
必ずしも彼の主義主張のすべてに
共感するわけではないにもかかわらず

引用した文章の
甘いといえばこれ以上ないほど甘く
理想主義のロマンチストな考え方には
いいぞ、もっとやれ。
と思わざるをえないのです。

敵が攻めてきて
戦わないでいられるのかおまえ。
と高々と発言するのも

亡びてもいいじゃん。
と卑下して言うのも

どっちもどっち

ならば
エエカッコシイの発言のほうが
かっこ悪いと思う。んだ。