編集者が編集するのは本だけじゃない! ○○もだ!

ウェブも電子書籍もDVDもCDも編集しちゃうよでもいちばん仕事多いのはけっきょく紙

俺的「どーなる出版界・2014」

出版の明日は!
みたいな話が好きな人、って一定数いるものですが
かくいう私も大好きで大好きでもー。

今年は書店の店頭で「本屋さんの本」が目立った一年でした。いま私の手元にあるだけでも、以下の本をあげることができます

「本屋さん」の逆襲?――2013年を振り返って « マガジン航[kɔː]

紙書籍で少部数初版のみという本が、デジタル・オンリーへと移行していくのは間違いないだろうなと。デジタルファーストで、そこそこ反響があれば紙も出す、という方向性が、今年は加速していくように思います。また、デジタル・オンリーでそこそこ稼げる作家も複数でてくることでしょう。そんな中で、ボクも一端を担えるようにします。というか、そういう一年にします。

一年の始まりなので、2014年に電子出版関連でどんな動きがあるか予想してみる : 見て歩く者 by 鷹野凌

13年は大きな事件は起きなかったにしても、出版業界は正念場を迎え、14年はあからさまな解体の時期として顕在化してくるであろう。

出版状況クロニクル68(2013年12月1日〜12月31日) - 出版・読書メモランダム

というようなエントリを読むのは好きなんです・けど
自分で予測する気はないんだよねー、
って横向いてるのは
べ、べつにしゃべったらアホがバレる。
って自意識過剰になってるせいぢゃないんだからっ
わ、わたしの仕事が
出版正規軍とは違うスタンスだから……
だからなんだからねっ

という話はいったんおきまして
USでも「出版界を予測する」ネタは当然のようにあります。

なかでもSmashwordsって
個人作家のためのプラットフォームを2008年から構築している
老舗サイトの公式ブログが
俄然注目を(わたしのなかで)集めるきっかけになったのが
こちらのエントリ。

Smashwords: 2014 Book Publishing Industry Predictions - Price Drops to Impact Competitive Dynamics
懲りずに2014年の出版界を予測してみるよ。2013年の予測のうち何個かはクソ外れだったけど。て冒頭に書いてあってむしろそっちの検証に心を奪われてしまう

US出版界の2013年展望が
どの程度当たっていて
どの程度外れていたか、とか
2014年展望についての詳細は
どなたかが翻訳してくれればいいと思うので←
ここでは触発された挙句
当初やる気がなかった
ニッポン出版界の2014年展望
を書いてみようではありませんか。

といっても
「出版界ぜんたいの売上は下がるだろう」とか
「某所の図書館問題は相変わらず燃料投下され続けるだろう」とか
「今年もアマゾンがなんか言うたび俺たちはおー。って言う」とか
そういうコトを
ドヤ顔で語っても仕方ないしね?
って考えていくと
意外に言うべきことが残りませんで
5項目。

1.正規軍と非正規軍の壁は「まだ」壊れない

私(だけが使っている)用語の
「出版正規軍」「非正規軍」ですが
後者はつまり新古書店とかKDPとかデジタルonly「出版社」とか
そのユーザーとか、そういう人たちを指しまして
(当然私自身も含まれる)

本は取次を介して新刊書店へ配本され、
そこで正価で購入されるものである

というような-かつては確かにそうだった-認識を
2014年になっても墨守するひとたちからは
「非正規」と見られて(拗)
たいへん申し訳ないことだと自覚しつつも
既に流れは「こっちに来ている」
という確信が揺らぐことはありません。

なにしろ
市場規模縮小スピードの緊急度とかからすると
「非正規軍なんか存在しないから」って
目をそむけていられるのも
今年が限度なんじゃないですかね。

2.戦略的値付けの重要性を認識する正規軍現る

BOOKOFF「2014年3月期 第2四半期決算説明会資料」 がアツい件 - 編集といえば出版編集だろjk時代の終焉に備えて
ってエントリで書いた通り
(非正規軍の雄)ブックオフは企業として
お客さんが求めているモノと
売っている我々の考えるモノの幅を狭めようと試みています。

あまり知られていませんが()
正規軍にもポット出版のように
違う角度から試みている版元は存在するわけで
やりゃー出来るんすよ。

ってことは
さすがにそろそろ
背に腹はかえられない、と考える
正規軍も出て来るんじゃないか、と。

3.安く売るだけが電子書籍の値打ちではない、という認識が少しは浸透

紙の本って
単行本→文庫本という
正規軍自らがおこなうダンピング
新古書店という非正規ルートを経由することで
心ならずも発生してしまうダンピング
2種類があるわけですが
(追記)
自分が「読む本」のことを例にあげてしまった。
……「作る本」のジャンル、実用書は
このパターンにあまり嵌りません。
以下、文芸系の例、ということで。
(追記ここまで)

その一方で、電子書籍の値付けは
アマゾンに身も心もゆだねちゃう(はーと)
って道を選ばない限り
出版「者」の意志が通ります。

つまり、このタイトルは
本当に欲しいひとだけに読んでもらえればいい、
10,000円で高いっていうひとには買ってもらわなくていい、
15,000円でも欲しいってひとに売りたい。
って考え方がアリな世界。

このコンテンツの適正価格はこうです。
ってキメを
流通のせいにしたり
ユーザーのせいにしたりできない分
追い込まれることになる世界でもあるわけですが
そろそろ、そういう面で
電子書籍が注目されることもあるんじゃないか。

4.非正規軍による正規軍成功体験モデル、まだクルー

うめ、藤井太洋、という先駆者のおかげで後進も出やすく。
って書くと
なんだか失礼にあたりそうな気もしますが

テレビドラマ化、あるいは
著名版元からの紙の本としての刊行という
いかにも正規軍っぽい活躍のきっかけが
電子書籍のヒットという
正規軍従来型の武器で戦っていただけでは
為し得なかった事象だから
非正規軍な俺たちもガンバローっていうような意味でする。

5.出版界隈じゃないところで編集力の勝利事例(願望)

これ、自分のさいきんの仕事もこんな感じではあるんで
ガンバロー(再)ではあるのですが
たとえば
某市立図書館で有名な某市長のふるまいが
より一層、脚光を集めるには
きっとなんらかの編集力がそこで必要とされるわけです
(恣意的に何かをとりあげる、という意味では無論なく)

あるいは
声の大きな人たちがこぞって
「俺たちが正しい」
「清聴せい」
と言い張る事象に対抗するのも
編集の力じゃないか、と思うわけです。

たぶん旧来型・正規軍的な「出版」の見直しは
そういう文脈で訪れるんじゃないか。
そう考えていますこちらからは以上です(長いわ