23.江戸の夕映
初出:1940年週刊朝日
参照:朝日文庫版(10)(1981年11月、解説なだいなだ)
時代設定:1868年4月〜5月
「江戸城の明け渡しがすみ、西軍が御府内にはいってからというもの」
(江戸城の無血開城は1868年4月11日)
「うむ、いまのは湯島台だ。不忍ノ池越しに撃っているんだ」
(戊辰戦争で彰義隊が敗れるのは1868年5月15日)
彰義隊って女子力高いですよね。男子だけど。
というよりアラフォーなメンバーも多いけど。
敗者の美学をエンジョイしてるのが白虎隊との最大の違いで
あいつらのアポクリン汗腺は働いてませんね。
デオドラントスプレー使ってるだろ(←偏見
(昔の尊攘派に、どこからともなく人間が集まって来たのと同じ形だな)
鞍馬天狗は、こう見ている。
(いざとなって、この中から幾人残って節に殉ずるかだ。俺たちのときも平常大きなことを言っている奴に限って、公儀の圧迫を恐れて、最初から逃げ腰の奴が多かった。いざなにかやろうという場合になんとなく姿を消してしまう。しかし、平穏のときは、一番熱心で頼もしく見えている奴だ)
不思議な縁で彰義隊に出入りすることになった鞍馬天狗による従軍レポートも、
かくのごとく私の予見を補強する材料なのですが
そういえば「12.鞍馬天狗余燼」では
寛永寺の黒門の外側あたりをうろうろしている彼が
本作においては
アームストロング砲が飛びこんでくるタイミングになっても
不忍池の内側を走り回っていて整合性がとれなくて困るんですががが。
全部で47作あるシリーズの分類には
執筆日時がおおよそ第2次世界大戦の
戦前・戦中・戦後、どこにあたるかで分ける、
ざっくりした3分法と
執筆時の作者のムードによって細かく分類する、
5分法があります(すみません嘘です今、思いつきました)
第一期:1〜22 (戦前)
第二期:23〜29(戦中)
第三期:30〜47(戦後)
第一期:1〜10 (習作期)
第二期:11〜22(少年読物注力期)
第三期:23〜29(内省期)
第四期:30〜36(リハビリ期)
第五期:37〜47(息抜きに鞍馬天狗書こう期)
(ナンバリングは発表年順)
ただ、本作はご覧のとおり、いずれの分類法に拠っても
「期」替わりに位置する・と思える作品ではあります。
戦争の色がどんどん濃くなって
比例するように、物語が重苦しいものになっていく後続作の
直前、まさに「夕映」のように輝く、明るさに彩られた短編です。