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「おもしろい小説」って何や問題(続)


何日か前に3年前の日記を転載したのですが、それは
自分で自分のことを「おもしろい小説」と名乗るって
控えめに言っても僭越ですよ? という主旨のエントリでした。
ところが、来訪者の検索キーワードに
「おもしろい小説」がちらほら見えることに気付いてしまい……
(以上、ここまでのあらすじ)


正直なところ
好きな小説」はすぐに挙げられるし
おススメの小説」も言えると思うんだけど
おもしろい小説」って
そんなビッグなキーワードで
人が本を探すとは思っていなかったので
うん、驚いた。


さあそこで、じゃあどんなのが
私にとって「おもしろい小説」か。

1. 事前知識を必要としない
2. いろんなレイヤーで楽しめる
3. 何度でも読み返せる
4. 古くさいとか言わせねえぞこの野郎
5. 「読まないまま死んじゃうところだったよ危なかったよ」と思える


今年読んだ小説のなかでたぶんベスト1になるであろう
梨木香歩「村田エフェンディ滞土録」(2004)は

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)


上に挙げた条件でいうと、1.が微妙かなあ。
100年前の日本人留学生、村田くんが主人公なんで
そこの想像力がまるで働かないと
物語の中に入れない・かもしれない。
だけど、読み終えてからの余韻が長く続くことったら!


一方、去年のベスト1、
近藤史恵「モップの精は深夜に現れる」(2005)も

モップの精は深夜に現れる (文春文庫)

モップの精は深夜に現れる (文春文庫)


1.の項目が少し気になる・かもしれない。
シリーズ1作目でゆっくり積み上げた
主人公のキャラクターを踏まえてるから。
だけど(再)一見ライトに感じられるタッチで
人間の内側の複雑なトコロへ作者が分け入って行く「勇気」が
この小説を
まるでライトに扱えない作品にしている最大の理由かと。


これまでの人生で接したなかで、と範囲を広げてパッと思いつくのは
河口慧海チベット旅行記」(1904)
……そうねえ、ちょっと文体の敷居が高いかも、という意味では
上に挙げた「おもしろい小説」必要条件の
1から4までぜんぶに抵触するかもしれないし
そ も そ も 小 説 じ ゃ な い わ !


ただ、初読はもう25年前になるんですが
いまだにこの本から受けた衝撃は薄れない、というのは本当です。
疑うなら青空文庫に入ってるから今すぐ読めるよ!
http://www.aozora.gr.jp/cards/001404/files/49966_44769.html


序文は漢語だくさんだけど本文は口語体だし
入口付近で引き返さず
自分の脳が文章に慣れるまで辛抱すると
100年前のお坊さんがガチで世界の果てまでイッテ来とる(ω)
驚きで笑っちゃうと思うの。