編集者が編集するのは本だけじゃない! ○○もだ!

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文庫化待つってひとも単行本買ってほしいんだけど■という声に過剰に反応する事案が発生

わーおもしろーい。
痛いところを衝かれた人間の典型だねー。
うふふー。

と笑っていただける範疇を
超えてるんじゃねーのか俺。
と思ったのは
新刊書店に勤めるひとであれば
何の不思議もない発想な
「文庫でなく単行本で買ってほしいんだけど」
というだけのフレーズに対して
脊髄反射で
自分の口からことばが次々
飛び出てきたからで

それはあたかも
あ、あのときは
あ、アカウントが乗っ取られてたんだぜ。
と言いたくなるような
白昼夢のような出来事でした。


まあね
目の前にこんなに面白い
横山秀夫待望の新刊が
宮部みゆき畢生の大作が
高村薫の合田雄一郎が
手ぐすねひいて待っているにもかかわらず
「早く文庫化しないかなあ」
とかいっちゃってる我々に
肩をすくめたくなるのは
理解できるんです。

でも、われわれ

■文庫待ちクラスタからひとこと
申しあげたい。
・たとえば1万円ここにある
・全額を本に使っていい
・単行本なら4~6冊買える
・文庫本なら12~15冊買える
・新古書店に行けば30~50冊買える
というようなシチュエーション。
「古いというだけで」
「同じ商品が値下がる現実」
そこに
疑問を抱かざるをえない時代のわれわれは
「最も高い価格であえて購入する」行為には
なんらかの葛藤を経たあとで
結論を出さねばならぬ。
それが真摯な態度というものにあらずや。
……でしょう?

すなわち

・この作家さんに次作も書いてもらいたい
・この本屋さんにつぶれてほしくない
・この本をいますぐ読みたい

そういうよっぽどの理由があれば別、
なければ文庫化を待つ。
2年でも3年でも4年でも。
ご、5年は待たされ過ぎかな
それがわれわれ
文庫待ちクラスタの矜持(キリッ

 上で挙げた
 ・この作家さんに次作も書いてもらいたい
 ・この本屋さんにつぶれてほしくない
 については本題から離れるので
 手短にすませますが

 作家という職種も
 新刊書店という業種も
 絶滅危惧種というべきであり
 その保護施策が
 国家の税でまかなわれる日も
 ひょっとしたら来ちゃうんじゃないか。

 というぐらいながら
 とりあえず
 「本を読むのが好き」な人間が
 自分で出来ることがあるとすれば
 「本を手にする喜びを与えてくれる、
  作者や新刊書店に
  金で感謝の意を表明する」
 ということ。

 ……ではあっても、ですよ。
 単行本をひととおり店頭に並べて
 「ほどよきインターバルをおいてから」
 文庫化する、それによって生ずる収益が
 少なくとも作家の懐に与えるインパクトは
 無視できるほど小さなものではない、
 という点。

 高いの買ってくれるとうれしいって
 小売視点はわかるけど
 たとえば俺はビールしか
 絶対に(いいか、絶対にだ)買わないけど
 世の中では発泡酒だの第三のビールだの
 デフレ傾向が不可逆に進んでいる。
 自分の取り扱う商品群を
 神聖視するよう期待はできないのは
 どんな業種でも同じ、という点。

 いずれも
 「そーなんだよねー」
 ではあり
 だからこそ
 絶滅危惧種という声も出る。
 ってまあ繰り返しになりますが、
 それはまた別の話。
 (ぜんぜん手短くなかった件)

■「この本をいま読みたい」問題
面白いに決まっている本を
たとえば3年とか、待ち続けられるのか
という疑問の裏側には
「すぐ読んでる俺のほうがエラい」という
優越感がひそんでいる、いいや、
否定したってわかる、
なあみんな、そう思うだろう?
(そうだそうだ)
(共感の声)
(文庫待ちクラスタ・決起集会より)

だけどね、あなたね
たとえば3年間ずっと
おもしろいんだろうなあ
読みたいなあ
おもしろいって盛り上がってるしなあ
うらやましいぜ
早く文庫にならないかなあ
と思いを募らせて
それが遂に叶う瞬間の喜びを
あなたたち単行本派は知るまい?

3年待って
しみじみヨカッタ本を
読了する瞬間の
その本の重さは
あんたたち単行本派より
俺たち文庫化待ち派のほうが
待ってた時間分、重いんだよ。

と言いたくなるぐらいには
耐え難きを耐え
忍びがたきを忍び
それが快感に変わる
……という
ああそうさ、俺たちゃ変態さ。
(変態で悪いか)
(怒号)
(歓声)
(嬌声)
(等々)
(同上決起集会、
 ここから先、字がつぶれていて読めない)